崩れた「原発五つの壁」2011/04/09

 3月7日深夜に起きた東日本大震災の余震で、東北電力・東通(ひがしどおり)原発の非常用発電機が停止するトラブルが発生しました。非常用発電機3台のうち2台が定期点検中。命綱だった残り1台の発電機が作動したものの、8日午後になって油漏れを起こして停止。3台の発電機すべてがストップする事態になりました。外部電源の一部が復旧していたため、すべて電源を失う事態は免れましたが、下手をすれば使用済み核燃料が熱をもち、東電福島第1原発の二の舞になりかねない状況だったと思われます。東通原発の震度は5強。この程度の地震ならいつでも起こります。それで電源喪失が起きるようでは、「安全基準」が相当いいかげんだったのだと思われます。
 共同通信ネット版によると、経済産業省の西山英彦官房審議官(原子力安全・保安院担当)は9日午前の記者会見で、「五つの壁があるなんて言ってきた。私も多重防護で絶対大丈夫と信じてやってきたが、こういう事態になった」と反省の弁を述べました。発言のきっかけとなったのは、7日深夜の余震だったそうで、「東通で起こったことを考えると、これまでの対応は十分でなかった」とのべました。
 「五つの壁」とは、(1)ペレット(2)被覆管(3)原子炉圧力容器(4)原子炉格納容器(5)原子炉建屋―をいいます。
 【ペレット】 核燃料を焼き固めたもので、大部分の放射性物質を中に閉じ込める。  【燃料被覆管】 ペレットを密封するジルコニウム合金製の管。ペレットから出る少量の放射性ガスも閉じ込める。
 【原子炉圧力容器】 厚さ16センチの鋼鉄製容器。数万本ある燃料棒を収納。何らかの原因で被覆管が損傷しても、放射性物質を閉じ込める。
 【原子炉格納容器】 圧力容器など主要な原子炉機器を包む厚さ3センチの鋼鉄製容器。最悪の事態が発生しても、放射性物質を閉じ込めておく。
 【原子炉建屋】 1~2センチのコンクリートでつくられた建物。放射性物質の閉じ込めに万全を期す。
 この「五つの壁」は、「原子力安全神話」を支えてきたものです。すでに「五つの壁」が崩れ去った、という指摘はさまざまされてきましたが、政府関係者も認めざるを得なくなりました。神話は崩壊しました。
 佐賀新聞のネット版は、「『福島震撼 検証玄海』崩壊 原発安全神話(1)」という企画記事のなかで、3月22日に開かれた参院予算委員会の模様を伝えています。
 「22日の参院予算委員会。国の原子力安全委員会の斑目春樹委員長は、以前、非常用電源がすべて喪失した場合について『そんな事態を想定したのでは原発は造れない。割り切らなければ設計できない』と発言していたことを指摘された。『割り切り方が正しくなかった。十分反省している』と『想定』の甘さを認めざるを得なかった」
 原発で儲けようと思えば、安全対策が「割り切り」の対象になる、ということです。原発の新設はやめ、いまある原発も少しずつ減らしながら、新しいエネルギー政策を確立することが、もっとも安全な道だと思われます。

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